世の中には、同じ物を異なった呼び方で呼ぶことがたくさんあります。
ここでいう「指だけ練」も、そんなもののひとつです。
ここでいう指だけ練とは、楽器を持たずに文字通り指だけ楽曲にあわせて動かす練習
を指します。また、楽器を構えていて息も吹き込んではいるけれど、適当にアンブシュアを調節して
音がならないかかすかになる程度の状態で練習をすることを「音なし練」としますが、
基本的には共通部分が多いので、厳密に区別しなくてもよいかもしれません。
いずれにしても、普通の練習のように音を出すのではなく、指の動きだけをトレースする練習、 という風に考えればよいと思います。もちろん音をちゃんと出して練習できるのであれば こんな練習をする必要性は特にありません。しかしたとえば夜遅くに練習するような場合、 ご近所の迷惑を考えるとむやみに音を出すわけにはいきません。あるいはどうしても時間がなくて 電車での移動時間のような場面で何とかフォローしておかなくてはならない、という場合も 指だけ練をする可能性があるでしょう。さらに、合奏中で他のパートを分奏している隙に 難しいパッセージをこっそり練習する、というのもあるでしょう。
では、指だけ練でどんなことができるでしょうか。
まずは、初めて楽譜を見たときなどに運指を確認する、という場面が考えられます。
複雑なパッセージで、運指のつながりがどのようになっているのかを確かめたり、
スムーズな移行の障害となりそうな動きを割り出したりするのであれば、楽器がなくても
指の動きをトレースして調べることができます。もちろん実際に音を出しても
構わないのですが、音を出せない、あるいは楽器がない状態でも、かなりのレベルまで
再現できる可能性があるといえるでしょう。
これをもう一歩進めて、自分が苦手としている指の動きを繰り返しさらう、というのにも 使えそうです。特に薬指や小指の動きは、大事な場面が多いにも関わらず動きそのものは ぎこちなくなってしまうことが多い、という厄介なものです。ですから、時間のあるときに 一回でも多く指の動きを練習しておけば、それだけ指の動きをスムーズにすることが できるのではないでしょうか。
しかし、指だけ練も万能ではありません。その限界や問題点を無視すると、逆効果に なってしまう危険性も含んでいます。次に、指だけ練の問題点を整理してみましょう。