初めて吹くリードで演奏会に出るという人は、よっぽどの事情(リードを全部忘れたとか)が
なければ普通はいません。しかし、初めて出してきたリードをどのくらい吹くか、ということに
ついては、人によってその考え方はさまざまです。では実際には、どうなのでしょうか
結論を言えば、はじめのうちはあまり長い時間吹いてはいけない、ということになります。その
理由のひとつは水分の浸透に関する問題、もうひとつはリードが振動することに関する問題に
原因があります。
まず水分の浸透に関する問題です。リードは水分に触れつづけると、その水分がじわじわと
リードの中に染み込んでいきます。すると、繊維全体が過度に柔らかくなって、リードの腰が
失われていきます。もちろん、適度な水分は繊維のしなやかさを保つのに必要なのですが、
新しいリードは水分の浸透が早いので、すぐに水分が染みすぎてしまうのです。この状態で
吹きつづけると、腰のないリードは薄く感じるので、息を強く入れるようになります。
その効果もあってリードに無理な力がかかり、それを支えきるだけの力が繊維にありませんので、
繊維が破壊されてしまうのです。その結果、リードをだめにしてしまうのです。
繊維の中まで水分が染み込むと、リードはその部分が半透明になったように見えます。この
状態になってしまったら、すぐにそのリードを使うのを止めるべきです。吹き慣らして時間の
たったリードは、簡単には水分が繊維の中に浸透しませんので、長く吹いても平気なのです。
もうひとつの振動の問題は、別の記事でも触れたように、 振動による繰り返し変形の問題に帰着します。金属の場合は、たとえ休ませても質が 変化することはほとんどありませんが、植物の場合さまざまな化学的変化によって、性質が 徐々に変化することがあります。それがリードの場合は繰り返し変形に耐える方向に 変化するのです。ですから、その耐性がつく前にリードを酷使するのはあまりいい結果を 生まないのです。
では、新しいリードは短時間なら毎日吹いてもいいのでしょうか。これも厄介な問題ですが、
このように考えればいいのではないでしょうか。
まず、前項で述べたリードの質の変化について考えます。この変化は、振動のほかに唾液の
成分なども影響しているようですが、変化自体は非常にゆっくりしたものです。その証拠に、
いったん水分が染みて半透明になったリードを乾かしても、また吹けばすぐに半透明に
戻ってしまいます。これは、一回吹いたからといって、リードの性質が劇的には変化しない
ことを示しています。丸一日置けば変わるのか、というのも同様に微妙です。
もうひとつは、いったん染みた水分が乾燥するまでにどのくらい時間がかかるのか、と
いうことです。確かに表面上は、一日置けば元通りに乾燥します。しかし、リードの中の方は
どうなのでしょうか。一説には、一回吹いたリードが完全にもとの乾燥状態に戻るには
およそ50時間必要だといいます。この数字はどのように導き出されたのかはっきりしませんが、
いずれにしても、表面が乾いているからといって、中まで元通りに乾燥しているわけでは
ないようです。
これらのことを考えると、毎日吹くよりも間をあけたほうが、リードにとって見れば
いいように思えます。慌てて吹き慣らすよりは、のんびり慣らしていくほうがいいようです。
では、このような吹き慣らしをいつまで続ければいいのでしょうか。
具体的な時間は、はっきりいってわかりません。というのは、リードの状態や吹き鳴らしの
方法、内容によってリードの変化が落ち着くまでの期間は異なるし、同じやり方でも
リードの個体差によっていくらでも期間は変わってしまうからです。
でも、それぞれのリードについて細かく観察していれば、もう大丈夫という感触は確かに
掴むことができます。たとえば、多少長い時間吹いても水分が浸透しなくなるとか、
吹いているうちに吹いたときの感触が変化しなくなる、ということが挙げられます。また、
前回吹いたときとの印象の変化がなくなる、ということもあります。これらの変化を常に
気にしていれば、その変化がなくなりリードの性質が落ち着いたところで、本格的に練習や
本番で使えるようになっていると考えていいでしょう。
ここにいたるまでに期間は、やり方や各種条件でずいぶん変わってきますが、大まかに
言って1ヶ月〜数ヶ月といったところでしょう。少なくとも数日とか2週間ぐらいで
安定するということはまずありません。いずれにしても、慌てずにじっくり慣らして
いくことが、一番肝心だと考えます。