人間の感情の一番基本となるものとして、喜怒哀楽というものがあります。 これは、みなさんご存じの通り、喜び、怒り、哀しみ、楽しい、です。 もちろん、人間の感情はこれで全てというわけではないのですが、まずはこの 基本から考えて、それを応用すればいいことになっています。
さて、音楽の表情も、やはりこの喜怒哀楽の感情を表現することがベースに
なります。とはいっても、曲における喜怒哀楽がわからなければ、そんなことは
できませんから、まずは曲中における喜怒哀楽の意味から考えましょう。
音楽のそもそもの起こりを考えてみると、単純な言葉や仕草では伝えられない
その場の雰囲気や感動などを、自然に表現したことであるといえます。ということは、
音楽があって感情が生まれるのではなく、感情の中から音楽がわき起こってきた、
ということができるでしょう。
そうすると、その曲が、元々どういった背景で生まれた曲なのかを知ることが、
曲に感情をこめ、表情にするために重要になってきます。特に、現代の演奏会では、
(オペラ、歌劇とかは特に)元々の演奏形態と違う条件で演奏されるだけに、
気をつける必要があるでしょう。
その曲の生まれた状況や、表現したいことを考えると、その曲に対する感情も
はっきりしてくるでしょう。その感情が曲の喜怒哀楽の原点なのではないでしょうか。
曲の背景からその曲に対する感情がわき起これば大きな問題はないのですが、 頭で考えた感情(表情)と、実際に演奏するときに奏者が感じることはときどき 食い違ってしまいます。それをうまくカバーできるだけのものがあればいいのですが、 実際には奏者の感情はほぼストレートに演奏に出てしまいます。となれば、 曲の感情に見合った感情を奏者自身も感じるようにした方が得だといえます。
そのためには、一つはその曲に対して思い入れを持つことが必要になってきます。
いくら熟練した奏者であっても、好きな曲と嫌いな曲では接し方が変わってきます。
好きであれば練習も積極的にしますし、自分の理想にあわせて細かい技巧も工夫する
でしょうし、感情も曲と一体になってくるでしょう。かなり利点は多いです。
とはいっても、たとえばレクイエムが好きになれる人は少数派でしょうし、
その人によって得手不得手、好き嫌いがあるのは仕方ありません。不幸にも自分と
あまり相性のよくない曲をすることになった場合、どうしたらいいでしょうか。
一つの手段として、その曲には直接関係ないけど似たような感情をもてる場面を
考えておいて、それを想像するという方法があります。また、感情を色や形に
単純に置き換えて、そのイメージを持つようにする方法もあります。ただ、これらは
微妙にニュアンスが変わったりするので、他の人との兼ね合いが重要になってきます。
こんなことを考えてみてください。ひとつは、コンサートスーツに身を包んだ
まじめな表情のおじさんたちが、真剣な顔でわらべうたを吹いているシーン。
次は、アロハシャツを着た茶髪の若者による交響曲の演奏会。さらに、袈裟を着た
お坊さんによるロックコンサート。
実際にあるかもしれませんが、どことなく滑稽というか、なんか妙な感じがする
でしょう。確かにこれは極端な例なのですが、たとえ音楽は音が主体であっても
それ以外の要素に影響されている部分もあるのです。
このことは、奏者の表情について特に考えておく必要があります。服装は、
コンサートごとにだいたい決まっているので、ここでは言及しません。
つまり、いくら演奏がその曲にあった表現をしていても、奏者の表情があって
いなかったら、その効果が大きくそがれてしまうということなのです。
たとえば、ポップス系の楽しい曲を悲しそうな目で吹いたり、逆に哀歌を楽しそうに
ふいてしまうと、聞いている方は妙な感じがするのです。耳と目の情報が
食い違ってしまうからでしょうか。
このことは、意識してできるものではないのですが、意識しないでなってしまう
ことはよくあります。特に、奏者がその曲に十分感情移入できていないときに
起こりやすいようです。といっても自分で確かめるのはちょっと面倒ですから、
気になったら友達にみてもらうといいと思います。