クラリネットを吹く事の目的は、曲を演奏する事につきます。
それまでの過程として様々な練習がありますが、その練習は、最後には演奏の
面において何らかの効果があって初めて練習としての意味があったといえるのです。
そのように考えれば、実際に楽曲を吹くに際して、どのようにしたらより良い
表現が可能か、という事を検討する必要があります。
音楽には様々な要素がありますが、音楽に一番色どりを添え、奏者の好み、
あるいはくせが一番はっきり出るのはフレージングだとおもうのです。それは、
フレージングに関しての楽譜の指示はいたって単純かつ最低限のものに
限られており、奏者の感性によって補わなくてはならないからです。
例えば、同じレガートであっても、そのつなぎ方や微妙なニュアンスの違いに
よって、聞き手に全く違った印象を与える事も可能だからです。
フレージングを簡単にで説明するなら、いかに音楽を歌いこなすかという事だと
いえます。
音楽的に歌いこむためのひとつの手だてとして、112の法則という物があります。 地方や団体によってはこれが224だったり448だったりするようですが、中身は 一緒なので、ここでは112に統一しておきます。
これは、一口にいえば「フレーズのまとまりは1+1+2の単位でできている」と いう事になります。これではなんのことか分かりにくいので、実際の例を 挙げてみます。文部省唱歌の中から、いくつかの歌詞を下に書きだしてみます。
1・うみは/ひろいな/おおきい/な
2・はるがきた/はるがきた/どこにき/た
ここで、/は小節の区切りです。どちらを見ても、はじめの2小節は1小節単位で 歌詞の意味を区切ることができますが、3小節目と4小節目は区切ることが できません。つまり、この2小節は一体となって歌われるべき形に なっているのです。
これと似たことが、他の音楽についてもいえます。必ずしもここまで明確では
ないのですが、フレーズの切り方をこの基本に乗せてみるとすっきりと聞こえる
事が多いようです。
ですから、どうしたらいいか困ったときはこの考え方を思い出して参考にすると
いいと思います。
旋律に表情をつけるためには、いくつかの手だてがあります。 ひとつは、音量の変化です。もう一つは音色の変化です。他にもありますが、ここではその 音色について考えます。
もちろんクラリネットの音色は決まっていて、クラリネットでチューバの音色は
出ませんし、よく似た構造のサックスでさえ、同じ音を出すのは不可能です。
ここで言う音色とは、そういう楽器固有の音の中での変化の事を言っています。
音楽には何かの主張があるはずだと考えることができます。なんの主張もない
音楽(=無意味な音楽)などないはずだからです。
そうであれば、その主張にあった表情があるはずです。音楽で言う表情は、
音色がその大きい部分を担っています。無表情な音楽ほど無味乾燥なものは
ないでしょう。
いくら技巧的に優れていても、なんの主張もない音楽では誰も感動しません。
それでいいというのなら話は別ですが、そんな演奏はみなさんもしたくないはずです。
そんなのより、たとえ技術的には未熟であっても表情豊かな演奏のほうが
いいです。
結局、自分たちが音楽を通して何がしたいのか、をはっきりさせる必要が
あります。音楽の基本は、その場に居合わせたすべての人がいい気分になれる事
だと思います(もちろん、葬送曲のような例外もありますが)。
それをいかにして他の人に伝えるか、という事を考えると、音楽的な技巧と
いうのは決して指が回るだけじゃだめである事がはっきりします。自分の気持ちを
はっきり表現するための技術すべて、が「技巧」なのではないかと考える
ことができるのです。