クラリネットを修理すると、その内容にもよりますが、意外とお金がかかることが 多いように思います。財政的に裕福な人はともかく、少ない小遣いをやりくりしている 多くの人にとって、この問題は切実です。
たとえば、タンポを1個交換するだけならば、時間もそんなにかからないし、もっと 安くできるような気もします。その一方で、あまりに安くしてしまうと楽器屋が 成り立たなくなるのも分かります。実際にはこの両者のバランスを保つポイントに 価格が設定されているのですが、本当にそうなのか「タンポ1個の交換」を例に考えて みることにします。
はじめに、タンポ1個の交換の料金ですが、ある楽器店で「交換1個の場合700円から」と なっていましたので、これを基準としてみます。
修理にかかるコストとして、ますは目に見えるものから考えてみます。
確実に費用がかかるのは、交換する新品のタンポです。タンポは、交換用のセットが
15個程度入ったものを、3000円前後で入手可能です。タンポの大きさによって、多少
差はあるかもしれませんが、1個200円程度と仮定することができそうです。
次に、タンポをとめる接着剤はどうでしょうか。固定用の松やにや接着剤は、買うと
数百円から時に1000円近くします。しかし、1個のタンポをつけるのに実際に使う量は、
買った量の何十分の一以下です。ですから、1個の取り付けに使う分は、10円もしない
のではないかと考えられます。これは、修理に使う道具についても同じようなことが
いえます。道具一式が、何個のタンポ交換に耐えられるのか分かりませんが、これらの
消耗品や工具の費用を、大雑把に50円と仮定しておきます。
そして、直接目に見えないコストです。
タンポをつけるためには、作業者が必要です。ボランティアではありませんから、
作業者には賃金を支払う必要があります。タンポの交換にかかる時間を、準備から
片づけまですべてひっくるめて15分と仮定し、作業者一日の賃金のうち15分ぶんを
リペア費用に上乗せすると仮定しましょう。リペア作業者の賃金水準はよく分かりませんが、
工員(工場などの作業員)の賃金水準が月30万円強らしいので、これをもとに推定します。
月あたりの賃金を32万円、月23日勤務、1日8時間労働とすれば、15分間の賃金は435円になります。
では、ここまでに挙げたコストを合計してみましょう。
200+50+435=685
推定の金額の積み重ねなので推定の金額ですが、タンポ1個の交換にかかるコストは
685円くらい、となりました。最初に書いたとおり、交換料金700円を基準として考えると、
その差はわずかに15円となります。
ところで、同じタンポの交換でも、楽器店によって値段はまちまちです。店によっては、
タンポ1個の交換でも1000円近くかかることもあります。この場合、推定コストの差は
300円以上になります。この差は何でしょうか。
これは、コストが推定した以上にかかっているか、さもなくば楽器店がコストのほかに
利益に相当する金額を上乗せして、料金を設定しているか、という事になります。
楽器店も、慈善事業をしているわけではありませんから、利益を上乗せするのは当然です。
ただ、楽器修理に対する考え方によって、どのくらい上乗せするかは大きく変わってしまいます。
その結果が、料金700円と1000円の違いになるのです。
このように考えると、タンポ1個交換700円から1000円という値段は、そんなにむちゃくちゃな 設定ではないことが分かります。確かに安いものではありませんが、その後ろにあるコストの ことを考えれば、少しは納得できるのではないでしょうか。