いま、一般的に入手できる楽譜のほとんどは、さまざまな出版社が作成しています。
国籍・規模などはさまざまですが、どの出版社にも共通の最終目標があります。それは、
会社として利益を上げる、ということです。ですから、どうやっても利益の上がらないような
仕事は、基本的にはしません。また、一見利益のなさそうな仕事をしている場合でも、
たいていは、その仕事自身には利益がなくても次の仕事で大儲けできるというように、最終的には
何らかのプラスになると判断していることがほとんどです。
このような条件がありますから、いくら出版社が「この楽譜を世界に広めたい」と思っても、
ただで配ることはできない場合がほとんどです。楽譜の原稿を作るための費用や、
印刷費、材料代、従業員の給料などを支払っても利益が残るような値段で販売する必要が
出てくるのです。また販売についても、いつ売れてもかまわないというわけではなく、完成してから
ある一定の期間で売り上げを立てなければなりません。そうしなければ、費用を回収して
次の製品(楽譜)を作ることができませんし、作成のために借金をした場合などは、その返済が
できなくなってしまうからです。
別のコラムでも触れているように、楽譜はほかの書籍類と比べて不利な面があります。
大きなものとして、売れる総数が少ない、ということが挙げられます。これは、
大量生産することでコスト低減を図ることができないことを意味します。取材や編集に
かかった費用を発行部数で割った場合、新聞や週刊誌であれば発行部数が多いので
一冊当たりの額は小さくなります。しかし、発行部数が少なければ額は大きくなり、
その分一冊の単価が上がることになります。
また楽譜は、いま作ってもいつ売れるかわかりにくい、という性格もあります。
たとえば、週刊誌であれば次の号が出るまでに売り切ってしまうことになりますから
「今週号の売り上げを次々号の特集の取材経費に当てよう」といった算段が
しやすくなります(もちろん現実にはこんなに単純ではありませんが)。ところが、
いつ売れるか分からない、すなわちいつ収入があるか分からないと、次の支出の
予定も立てられません。そうなると、売れるときにできるだけ高く売っておけば、
その次に売れるのが少々遅くなっても何とかやりくりできるのではないか、と
考えるのも無理はないといえるでしょう。
一方で、総作成数が少ないということは、小さな本屋や売店まで行き渡るほどの
数がない、ということでもあります。そうなれば、新聞や週刊誌のように
どこでも手に入る、というようなことにはならず、買い手から見れば「探さないと
売っていない」という状態になってしまいます。さらに、いつ売れるか分からない、
という問題は本屋にもついて回ることで、本屋によっては「扱わないでおこう」と
判断することも充分考えられます。それが、手に入りにくい状況に
拍車をかける結果となります。
結局のところ、作り手である会社の立場から見ると、値段も割高で入手し難い状況と なってしまうのは、ある程度やむをえない事と割り切らざるを得ない面があるのは 事実です。しかしそのことが、さらに楽譜を売れにくい商品としてしまっている 側面も否定できません。この負の循環からどのように抜け出せばよいのか、いろんな 立場から考えていく必要があるのかもしれません。