私たちはよく「このリードは厚くて吹きにくい」とか「そのリード、薄すぎるんじゃないの?」 というような会話をします。これらの表現は、一見なんでもないようですが、実は意外といいかげんな ものなのです。どこがいいかげんかというと、リードの「厚さ」に関する部分なのです。
一般に板状の物体は、その厚さが厚いほど曲がりにくくなります。このことは工学的にも証明できますが、
そういう理屈を抜きにしても、私たちも感覚的に納得できます。そして、吹きこなすのに息の力がいる
= リードが曲がりにくい = リードが厚い と考えることができます。この等式から、私たちは
普段からリードに対して「厚い・薄い」という表現を使っているのです。
ところが、リードが曲がりにくくなる要因はリードの物理的な厚さだけではありません。たとえば、
同じ大きさの鉄板とボール紙では、明らかに後者のほうがよく曲がりそうです。ということは、たとえ
全く同じ寸法のリードであっても、その材料が違えば硬さが異なり、吹き心地も異なってくるのです。
こう書くと「リードはみんな同じ材料じゃない」と思うかもしれません。しかし、リードの材料である
葦は自然の産物です。繊維の通り方や身の詰まり方は、育った環境でいくらでも変わる可能性が
あります。ですから、たとえ寸法的には全く同じリードであっても、吹き心地が違う可能性は
充分に考えられるのです。<
結局のところ、私たちはリードの物理的な厚さや硬さをすべてひっくるめて「厚さ」と
認識しています。では、リードの作り手のメーカーはどう表現しているのでしょうか。
ここで、バンドレン社のリードのカタログ(野中貿易から発行されているもの)を見てみます。
すると「番号付けはコシの強さに応じて決めている」といった「強さ」という表現と、「反響の
いい部屋では柔らかめのリードを」という「硬い・柔らかい」という表現の、二通りが見られます。
しかし「厚い・薄い」という表現はみられません。「強さ」と「硬さ」の使い分けは、前者が
おもにリードの機械的性質を述べるのに使われているのに対して、後者は吹き手の感性に依存する
部分で使われているようです。
このことから何が言えるでしょうか。はっきり言えるのは、メーカーはリードの物理的な厚さだけでなく
材質による影響も含めてリードの品質を考えているということです。これは、場合によっては
4番のリードの物理的厚さが、3番の厚さよりも薄いこともありえる、ということです。そして
その可能性を考慮してか、リードの「厚さ」ではなく「硬さ」で、リードを見ようとしているのです。
では、メーカーと私たちの中間にいる楽器店ではどうでしょうか。見る限りでは、そのお店の
店員さん次第のようで、メーカーと同じ表現で統一している場合もあれば、その場その場で
色々と変わっていることもあります。販売店が立っている立場と同じで、ちょうど私たちと
メーカーの中間の表現になっているかのようです。
では、リードのことを「厚い」と表現するのはだめなのでしょうか。
ここまでみてきたように、私たちが「厚い」と感じるリードが、必ずしも厚くないのは事実です。
一方で、私たちの感覚からすれば「硬さ」「強さ」よりも「厚さ」の方がすんなり受け入れられることを
考えれば、無理に「厚さ」という表現を避ける必然性もないように思います。ただ、どんな表現を
使うにしても、ここまでみてきたような背景があることは、知っておく必要があるのでは
ないでしょうか。