ステージなどの舞台に立つとき、やはり緊張することは避けられません。ただ、人によっては 極度の緊張によって、本来の実力を発揮できなくなることもあります。そのような状態を、一般的に あがった状態といいます。どのようなプロセスであがるのかについては、別の記事 (なぜ人はあがるのか)で紹介しましたが、ここではあがりを防ぐ方法を、 具体的に考えてみることにします。
あがりは、刺激に対する反応の結果起こります。ですから、刺激がなければあがることはありませんし、 刺激があってもそれに反応しなければ、あがることはないはずです。もう少し噛み砕いていえば、 あがりの原因を排除(もしくは軽減)するか、あがるときのプロセスを妨害してやればよいのです。
まず、あがる原因に対してどんなことができるか考えてみましょう。
あがる原因は色々ありますが、大まかに言ってしまえば、自分が多数の人の前にさらされること、
そしてその状態で何か失敗をやらかしてしまうのではないかという恐れが、大きな原因と
なっているといえます。そしてその影には、自分を認めて欲しい、あるいは自分の失敗は
他人に見られたくない、という気持ちがあるのです。
ですから、大勢の人の前に立つことがなければ、あがることもないでしょう。とはいえ、演奏会で 大勢の前に立たないというのは不可能ですし、たとえたった一人でも、その相手によっては 何百人分もの意味を持つこともあります。そこで、擬似的に「大勢の人がいない状態である」と 思い込むように仕向けることがあります。たとえば観客を野菜だと思う(=人間でなければ大丈夫?) とか、観客席に視線を向けない(=視野からの排除)などの行動が一例です。また、あがりの原因が 家族などの特定の人にある場合、「その人を演奏会に呼ばない」という極端な方法もあります。
ほかには、「たとえたくさん人がいても失敗しなければいい」という方向から考えて、しっかり 練習をして何があっても失敗しないようにする、というのもひとつの方法です。これが消極的になると 「たとえ失敗しても誰も気づかない、または誰が失敗したかわからない」と思い込む、というものに なります。これは一種の開き直りですが、あがりを防ぐという一点に関していえば、方法として 間違いではありません。ただ、演奏者の態度としては、できるだけ避けたいものです。
次に、刺激があってもあがらないためには、どんな方法があるでしょうか。
ひとつは、刺激をあがりに結び付けないようにするものです。たとえば、お守りや縁起物を
持っていくというのは、それらに頼ることで、刺激をあがりに結び付けないようにしているのです。
また、本番の場数を踏むことで、刺激に対する耐性を高めるのもこの分類に入ります。
変わったものでは、当日のスケジュールをわざと詰め込んでおいて緊張を感じる暇をなくす
というのも、これに当てはまるでしょう。
また、緊張状態に陥っても、それが緩和されれば過度のあがり状態は回避できます。よく、深呼吸を したり軽く体を動かしますが、これは緊張で神経が昂ぶることによって硬くなった筋肉に 刺激を与えて、昂ぶりを緩和しようとしているのです。タバコをふかす事で気持ちが落ち着き緊張が 緩和するともいいますが、舞台そでは禁煙なので、本番直前には使えません。
緊張の緩和には、精神的な部分が大きな意味を持ちます。車酔いは、車のゆれが三半規管に与える 刺激と、過度の緊張が主な原因であるといいます。車に酔いやすい人でも、友達とワイワイ しゃべっていたら酔わなかったという話もよく聞きます。酔い止めの薬は、精神を落ち着かせる 効果があるそうで、実際、あがりそうな時に酔い止めを飲んだら大丈夫だった、という事もあります。
「自分はすぐにあがる」という思い込みがあることで、余計に緊張することもあります。むかし ゲームかマンガで、緊張してガタガタ震えている後輩に「その震えがおまえの力になるんだ」と 励ますことで緊張が一気に解ける、という場面がありました。こんなふうに、尊敬している 人のひと言で、状況が一転することもあります。ただ、これは逆の場面もありえて、大事な人の 過度な期待を聞いたばかりに思い切りあがってしまう、ということもあります。また、これは 自分で言い聞かせるより、第三者がさりげなく伝えるのが効果的なようです。
このほかにも、いろいろな方法があると思います。いずれにしても、すべての人に役立つ方法は ないでしょうから、その人にあった対策を探すのがよいのではないでしょうか。