皆さんは、実音を表現するときに、どんな呼び方を使っていますか?
多くの場合、ドイツ音名を使っているのではないかと思いますが、いかがでしょう。
ところで、ドイツ音名にはひとつ不思議なことがあります。まずは、この表を見てください。
| 楽譜(実音) | |||||||||
| 音名(日本語) | ド | レ | ミ | ファ | ソ | ラ | シ♭ | シ | ド |
| 音名(英語) | C | D | E | F | G | A | B♭ | B | C |
| 音名(独語) | C | D | E | F | G | A | B | H | C |
この表を見ると分かりますが、日本語や英語では文字の順番に音名が決まっているのに対して、 ドイツ語では音階をたどると …A-H-C となっていて、B(ベー)は音階から外れた音を 示しています。もちろん、ドイツ語ではAの次がH(ハー)、というわけではありません。
これは、気にしなければそれまでの事です。でもここでは、あえてこうなっている原因を 推理してみます。なお、以下の文章はあくまでも推理の一例であり、事実ではない可能性が 高いです。その点をあらかじめご承知おきください。
さて、ここで音階の成り立ちまで戻って考えてみましょう。
この楽譜は、ハ長調の音階を示しています。この音階は、楽譜のように同じ形が二つ重なっていると
考えることができます。このように考えたとき、この二つの形は同じ二つの全音と一つの半音を
重ねた形をしています。この形のことを、テトラコードといいます。もともとは、古代ギリシャで
使われた音階に由来するようです。
さて、このテトラコードの重ね方には、二つのタイプがあります。
ひとつは上段の楽譜のように、二つのテトラコードを全音をはさんで重ねる方法です。見た目としては、
二つ目のテトラコードの一番上の音が、一つ目のテトラコードの一番下の音と同じ音になるように
重ねているともいえます。この重ね方を「分離テトラコード」といいます。
一方で、下段の楽譜のように、一つ目のテトラコードの一番上の音を、二つ目のテトラコードの
一番下の音にする方法も当然考えられます。このように重ねた場合、この重ね方を「接続テトラコード」
といいます。
ここで、二つのテトラコードをよくみてください。上段のテトラコードは、現在私たちが
普段使っている音階の形になっています。これに対して、下段のテトラコードは、第7音にあたる
シの音に♭がついています。接続テトラコードでは、実音でいうシではなくシ♭が、音階の基本の
音として使用されるのです。
ここで、もし「ドイツ音名は接続テトラコードをベースに決められた」と仮定するとどうなるでしょう。
そうです、接続テトラコードに素直に当てはめると、実音のシ♭がめでたくB(ベー)となるのです。
このように考えると、実音のシがB(ベー)でなくH(ハー)になっている理由のように思えてきます。
ただ、最初に断ったとおり、この推理はあくまでもひとつの仮説であって、実際の理由はわかりません。
ほかには「多くの楽器がもっともよく響きあう音だから」という説などもあります。
本当の答えはともかく、難しい楽典や練習から離れて、こんな風に音楽の成り立ちや歴史に
思いをめぐらしてみるのも、たまには悪くないことですね。