僕は、楽器本体のはしについている、金属のリングです。ごくまれに僕がいない
こともありますが、たいていの場合は楽器のつなぎ目のところに僕がいて、
楽器のフォルムを引き締める役を果たします。
僕は、キイと同じ銀メッキをしているので、見た目にもちろんきれいです。
でも、僕は単に楽器の飾りとしているんじゃないんです。もしかしたら皆さん
誤解してるんじゃないですか?僕がここにいるのは、もちろん見た目のことも
あるけれど、本当はもっと大事な役目を果たしているんです。
皆さんは、クラリネットのずっとずっと昔の祖先を見たことがありますか?
初期のクラリネットは、今のようなグラナディアではなく、ツゲやカエデなどの
木でできていました。ファゴットは今もそうですね、確か。これらの木材は、
加工するととてもきれいな木目を出すことができますが、残念ながら水分や
気温の変化に弱く、すぐ割れてしまうという欠点があります。特に、管が薄くなる
クラリネットの場合、その問題は顕著でした。そこで、当時の楽器工房の
職人さん達が、もっとも弱い断面部分に象牙のリングをはめて補強したのです。
時代がくだって、グラナディアを使うようになっても、やはり断面部分は弱かったので、
リングは形を変えて残りました。現在の楽器では、管体に塗る塗料などが
進歩したので、仮に僕がいなくても特に問題はないレベルにまでなっています。
でも、やはり楽器にとって、断面部分はウイークポイントであるので、いまでも
僕が守っているのです。一部の楽器の、ジョイント内側に金属を被せているのも、
考え方は一緒なんだ。
今度楽器を組み立てるときに、ちょっと僕のことを気にしてもらえたら嬉しいな。 気づかないところで、大事な仕事をしてるんだから。