私たちは、何となく「リードの形なんて、そう簡単には変わらない」と思っています。 しかし実際には、条件によってはあっけなく変形してしまうことがあります。
まずは、この写真を見てください。若干ピントが奥側に合っているため、少し分かりにくいかも
知れませんが、よくみると、リードのティップ部分が不自然に波うっているのが分かると
思います。皆さんご存知のとおり、本来ティップ部分はきれいな円弧状なのですが、このリードは
ティップ全体が波うってしまっているため、円弧が完全に崩れてしまっています。
では、このリードはどうしてこんな哀れな姿になってしまったのでしょうか。
実は、このリードは「リードの湿潤と乾燥」で実験に
使用したものです。記事中でも述べているとおり、リードを空調の流れが直撃する
ところに裸で放置したものです。このときの環境は、気温18〜22℃、湿度25〜35%
でした。気温の方はともかくとして、湿度25〜35%というのは、かなり乾燥した状態です。
しかも、空調が常に当たっているという事は、リードを無理やり乾燥させている状態とも
いうことができます。
なぜ、急に乾燥させると歪んでしまうのでしょうか。原因はいくつかあるのですが、いちばん
影響が大きいのは、リードの材質が均一ではないということです。一見、リードは均質な
ように見えなくもないですが、よくみると繊維の筋のようなものがあるのに気づきます。
これは、養分を運ぶ管などなのですが、この管の部分とその回りの部分では、材質や硬さが
微妙に違います。そのため、水の浸透しやすさ、乾きやすさも差が出てきます。
植物は、乾燥すると体積が減少します。もし乾燥の速度に大きな差ができると、速く
乾燥した部分が先に縮んで、まだ乾いていない部分を引っ張ろうとします。この引張り力に
よって、しわが寄ったのと同じような状態になってしまいます。他の部分が乾燥しても、
いったん歪んでしまった影響は、完全には消えません。こうして残った歪みが、上の写真のような
リードの波うちとして現れるのです。
このような変形を起こさないためには、どうすればよいでしょうか。
答えは簡単で、リードが急に乾燥しないようにすればよいのです。練習が終わったあとの
リードをそのまま外に放置したり、暖房器具にかざしたりするのではなく、リードケースなどに
しまって、ゆっくり乾燥できるような状態にすればいいのです。もちろん、いつまでも湿った
ままでは、リードの痛みやカビの発生など、別の問題が生じるので注意が必要です。
しかし、ときにはこのような原則に背かざるを得ない状況に遭遇することもあります。
皆さんの中には、本番中の休みの後いざ楽器を吹こうとしたら、リードがカラカラに乾いていた、
という経験がある方もおられるかと思います。ときには、リードが乾くだけでなく、歪んでしまう
こともあります。
ステージ上は、照明が当たっていることもあり、比較的湿度が低い状態になります。このときも、
リードを無理に乾燥させているのと同じことになってしまっているのです。かといって、ステージを
降りてしまうわけにもいきません。このような時は、たとえばマウスピースにキャップを
かぶせておくとか、リードを湿らせるためにリードを舐めたり、といった方法で何とか
しのぐしかないようです。