私たちが使っているクラリネットは、一部を除いてそのほとんどがグラナディアという 木材で本体ができています。木材ですから、当然木目がついています。楽器の状態では 上から塗料が塗ってあるので少しわかりにくいですが、よくみると木目の部分が他の部分と 見た目が微妙に違うのがわかります。
この木目が、どんな影響をもっているのかを考える前に、まずはなぜ木目ができるのかを
まとめておきましょう。
木目は、木の成長のスピードが異なる部分で生じます。たとえば、春から夏、秋口にかけて、
植物はどんどん生長します。しかし冬は、日照時間が少ないことなどもあり、夏に比べると
成長は遅くなります。また、寒い冬を乗り切る必要があるので、表皮の質もそれに
あったものに変化します。
特に四季の変化が大きい日本の場合、この違いが顕著に現れ、材木や建築物で見る
木目模様のような、はっきりした違いとなって現れます。グラナディアの場合は、育つ場所が
熱帯に近いところですから、日本のような激しい気候の変化はありません。それでも
1年を通してみれば気候の変化がありますから、それに合わせるように木目が形成されるのです。
では、木目があることを、音の観点からみるとどのように考えることができるのでしょうか。
音の振動は、この図のような分子(または塊)の振動ととらえることができます。弦が
左右に振れるような振動ではなく、音の伝わる方向に、前後に揺れ動いています。イメージとしては、
それぞれの塊がバネでつながっていて、押したり押されたりして振動が伝わっている、という
感じに近いといえると思います。
このとき、塊がすべて均質であれば、振動はどこでも同じように伝わっていきます。図はその状態を
示したものです。ところが、木目の部分とそれ以外の部分では、同じ木材でも、密度や
固さなどが微妙に違います。すると、振動の伝わり方も変わってきます。伝わる割合や、
早さも少しずつ変わってしまうのです。すると、どんなことが起こるのでしょうか。
木目と木目でない部分は、層状に重なっていると考えることができますから、大雑把にいえば
左図のような2種類のパターンが考えられます。もちろん、斜めに層が通るパターンもありますが、
少し厄介なので、とりあえずこの2種類について考えてみましょう。
まず、左のパターンは、層の通り方が音の進行方向に対して直角になっている場合です。
このときには、振動がどの部分を通っても、同じように 赤→緑→赤→緑 という経路になります。
すると、どの部分も同じように音が伝わるので、エネルギー的には素直に伝わることができます。
一方で、右のように、層が音の進行方向と平行になっている場合はどうでしょうか。このとき、
振動は場所によって赤ばかり、あるいは緑ばかり通って伝わることになります。すると、ある部分は
よく伝わるけど他の部分では伝わらない、という事態が発生します。このように伝わり具合に
段差があるのは、エネルギー的にはあまり好ましくありません。
では、実際の響きには影響があるのでしょうか。いちばんわかりやすい、バレルの部分で
考えてみましょう。
バレルに通っている木目は、だいたい図のようになります。実際には少し曲がっている
はずですが、ここでは気にしないことにします。すると、さきほど考えたエネルギーの
通りやすさを考慮すると、音の振動は矢印に示した方向に伝わりやすく、90度ずれた
方向には伝わりにくい、と考えることができます。ということは、バレルの向きを
変えることで、音の伝わり方が変わってくる可能性がでてきます。
実際に試してみると、バレルや奏者との相性にもよりますが、音の伝わりやすい方向を
前に向けた方が、音の通りがよくなると感じる場合が多いようです。一方で、横に
伝わりやすいようにすると、音が柔らかく包み込むように感じられることが多いようです。
もちろん、他の要因もたくさんありますから、必ずしも同じ効果が得られるとは
限りません。でも、こんなことも気にしてみると、新しい発見があるかもしれませんよ。
なお、この記事は伝言板での話題を参考に作成しました。