吹きはじめは楽器が暖まっていませんから、管内に水滴がつくのは
仕方ありません。しかし、ある程度吹き込んで楽器が暖まっても、しばらくすると
またまた水滴が発生します。これはどうしてでしょうか。
もちろん我々が楽器を吹くときは、常に息を吹き込んでいるわけではありません。
練習中なら注意を聞くときやメトロノームをいじるときなどに、楽器は置いて
おくのがふつうですから、その間に楽器は冷めてしまいます。また演奏中も、
休符があればその間に冷めていきます。とは言っても、いくら気温が低くても
そんなすぐに楽器が冷めるわけでもないし、延々とロングトーンをやっていても、
水滴が発生することがあります。その原因はどこにあるのでしょうか。
息の中の水蒸気が水滴になるためには温度差が必要です。ということは、水滴が 発生するところでは、その温度が息の温度よりだいぶ低くなっているはずです。 ということで、水滴が発生する管の内側の温度を調べてみましょう。
仮に、ずっと楽器を吹き続けていたとすると、楽器は冷める暇が
ありませんからどんどん暖まっていきます。そしていつかはもう変化しない、
という状態になります。これを定常状態といいますが、これはちょうど休みなしに
延々とロングトーンをしている状態とほぼ一致します。このときの管の表面の
温度を考えてみます。
ちょっと考えてみると、内側の表面はずっと息にさらされていますから、息の温度と
一緒になっているような感じがします。もしそうであれば、空気は冷やされませんから、
水滴は発生しないことになります。ところが実際には、気温にもよりますが、
こういう状態でも水滴が発生することがあります。ということは、この考え方には
何か問題があるのです。では、表面の温度は実際にはどうなっているのでしょうか。
実は、管の内側の表面は、息で暖められてはいますが、その熱の一部が楽器を
伝わって表面から外に逃げてしまうのです。この効果の計算は多少複雑なので
ここではあげませんが、この効果を考慮して計算すると、内側の表面温度は息の
温度より2℃ほど低くなることがわかっています。たった2℃とは言いますが、
この結果空気1リットルにつき1.8mlほどの水滴が発生するのです。
このほかにも、いったん水滴になったものが再び蒸発するときにたくさんの熱を
奪いますし、休みが入ることで楽器が冷えてしまう効果もあるので、管の内壁温度は
息の温度より下がってしまいます。これらの原因によって、たとえずっと息を
吹き込み続けていてもやはり水滴は発生してしまうのです。