私たちが楽器を吹くと、たいていの場合水滴が発生します。この水は、 楽器にとってあまりいいものではありません。トーンホールに水がたまると 音が正確にでなくなりますし、管の中の水を放置しておくと、楽器が痛んだり 最悪の場合、楽器が割れてしまう原因にもなりかねません。このように水滴は 困りものなのですが、一体どこからやってくるのでしょう。
すぐに思いつくのは、私たちの唾液です。私たちの口の中は常に唾液で
満たされています。それは流れ出していると思うのは、とても自然なことです。
ところが、楽器からでてくる水の量は、ふつうの状態ででている唾液の量より
ずっと多いし、唾液は気温によって分泌量が変化することはほとんどありません。
それに対して、楽器につく水滴は寒い方が多いのです。ということは、唾液は水滴の
一部分かもしれないけど、主体ではないと思われるのです。
ところで、みなさんは、寒い日に息をはあっと吐くと、息が白くなるのを ご存じでしょう。とてつもなく寒いところでは、それが氷になってきらきら光る そうですが、この白いものの正体も、水なのです。つまり、人間の吐く息は、 大量の水蒸気を含んでいるのです。その理由はちょっとわかりませんが、これが 冷やされると水滴になるのです。
では実際に、どの位の水が発生するのかみてみます。まず、空気のどの位の水蒸気が 含まれているかを調べてみると、その限界の量(飽和水蒸気圧)は次の通りです。
| 気温(℃) | 飽和水蒸気圧(hPa) |
|---|---|
| 10 | 12.28 |
| 15 | 17.05 |
| 20 | 23.39 |
| 25 | 31.69 |
| 30 | 42.38 |
| 35 | 56.31 |
そして、空気が冷やされて飽和水蒸気圧が下がると、水蒸気はその一部分が 水滴に変化してしまいます。たとえば、35℃の飽和蒸気を含んだ空気1リットルが 冷やされると、これだけの水滴が発生します。この値は少し実感的でないので、 水が1gできるのに必要な息の量も示します。
| 気温(℃) | 水滴発生量(mg) | 空気量(l) |
|---|---|---|
| 10 | 33.6 | 29.7 |
| 15 | 29.3 | 34.1 |
| 20 | 24.3 | 41.1 |
| 25 | 17.0 | 56.1 |
| 30 | 9.8 | 101.8 |
| 35 | 0.0 | - |
ちなみに、水滴1滴はだいたい5mlくらいで、水1gが管内にびっしりつくと、かなり
危険な状態といえます。
実際には、人間の息は完全に飽和しているわけでないし、いくら冬場のはじめは
楽器が冷えているとはいっても、吹いているうちに息で暖まってくるので、
単純にこれだけの水滴が発生するわけではありません。とはいいっても、
息の中の水分がでてきているのだと言うことは、実感できると思います。